ゴミ屋敷の明け渡しに向けた強制執行とは?
賃貸物件のオーナーにとっては、貸した部屋をゴミだらけにされるのは非常に頭の痛い問題となります。
アパートにしろ、マンションにしろ、あるいは戸建て住宅の賃貸物件だろうと、ゴミがとんでもない量にまで溜まってしまったら、さまざまなトラブルを引き起こすからです。
また、ゴミを溜め込むことによって、不動産オーナーはあるリスクを考えておく必要があります。
年齢をかかわらず増えているゴミを溜め込む人たち
戸建て住宅のゴミ屋敷を作り出すのは、高齢者が多いと言われています。
物がなかった時代に苦労して暮らしてきた経験から、物が捨てられているともったいないと考え、何でもかんでも拾ってくるからです。
その結果、家の中はもちろん、庭やガレージ、さらには家の敷地の外にまでゴミがあふれだすことになります。
中にはゴミ収集日に収集場所に行って、捨てられているゴミを袋ごとそっくりそのまま持って帰ってくる高齢者もいることから、この調子では瞬く間にゴミであふれかえります。
高齢者が家をゴミでいっぱいにしてしまう理由は、物が捨てられていてもったいないという意識で行われるだけでなく、認知症による問題行動の一つとして起こっていることがあります。
とはいえ、ゴミではなくて資源だ、まだ使える大事な物で、自分の持ち物だと言われたり、一人暮らしで身寄りもなく、それでいて認知症を発症して一人で暮らしてゴミを溜め込んでしまっている人を相手に、いくら物事の是非を説いてもらちが明かないことがほとんどです。
さらに、若い世代にもゴミを溜め込む傾向が目立ってきています。
忙しくて片づけられないという理由がもっとも多いものの、中には引きこもりが原因でゴミを溜め込んでしまうケースも増加しているという点は問題です。
外に出たくなくて家に引きこもっている人が、ゴミ出しをするために外に出ることは非常に怖いことのため、気が付けばさまざまなゴミが部屋の中にあふれかえってしまうというのが、若い世代に多い理由となっています。
賃貸物件の持ち主から見た視点はどうなのか
貸した人がゴミをどんどん溜め込んでしまう人だと最初からわかっていたら、賃貸物件のオーナーも貸さなかったでしょう。
つまり、賃貸物件契約の際には至ってまともな人に見えたということです。
実際、ごみでいっぱいになる前は普通に生活していたという人がほとんどで、ある時期を境に徐々にゴミが増え始めたという近隣住民の声は多く聞かれます。
ゴミが増えると当然悪臭がしてきますし、害虫や害獣も発生します。
マンションやアパートは勿論ですが、戸建て賃貸物件でもこれらの害虫や害獣が食べ物を求めて移動してきますので、非常に不愉快です。
これまでゴキブリなど出なかったのに、時には大量発生することもあり、こんなところはこりごりと出ていってしまう人もいるでしょう。
大家としては、まともな人に出ていかれてしまう原因であるゴミを溜め込んでいる住人にこそ出ていってほしいと考えるのが普通ですので、ゴミ屋敷条例に基づいてゴミを撤去したのち、部屋の明け渡しを望むことが増えてきています。
どうしたらきれいに片づけて出ていかせられるか
大家にとって重要なのは、どうしたらゴミをすっきりきれいに片づけたうえで出て行ってもらうかです。
借地借家法においては弱い立場の借主を強制的に追い出すことはできないため、法的には借主の方が守られているからです。
とはいえ、ゴミを溜め込んでしまったことを理由に出ていかせる方法がないわけではありません。
直接的な法律はありませんので、自治体に申し出るところから始めます。
自治体はこの要望を受けて調査を行い、まずは指導や勧告を行いますが、これには法的な違反による罰金といったものがないため、なかなか退去してもらえないのが実情です。
そうなると、最終手段に打って出るほかありません。
先述したように、借地借家法においては賃貸契約を結んだ以上、そう簡単に入居者が追い出されることがないようになっています。
とはいえ、それはあくまでも常識的に暮らした場合であり、ゴミ屋敷にされてしまったときには建物賃貸借契約において、信頼関係を破壊する義務違反があるものとして、借り主に対して賃貸借契約を解除し、貸家の明け渡しを求めることができるという定めがあります。
これは裁判により判決が出されますので、明け渡し期日が決められ、それでも退去しない場合は強制執行に向けて手続きが進められていくという流れです。
大事な資産である賃貸物件をゴミでいっぱいにされてしまったら、どんどん他の入居者が出ていったり、部屋そのものも傷んでくるなど、まさに家主としては踏んだり蹴ったりです。
このような場合は強制的に出ていかせることも考える必要があり、そのための手段の強制執行について知っておくことが大事です。